クラシックカーを見てかっこいいと思うように、T型フォードの時代から最新のプリウスに至るまで脈絡に受け継がれる「クルマのカタチ」というものは確実に存在します。
私たちが普段見る車というのは形状こそ異なれど、4輪のタイヤがあり、張り出したボンネットというのが一般的だと思います。しかし、未来を描いた漫画やアニメなどで見る車の中には、なんだこれと思うようなものも多くあると思います。
未来の車とは、実際どのようなスタイルになるのでしょうか?
日産の「インフィニティ」デザイン責任者カリム・ハビブ氏があるインタビューで「未来の自動車は、ボンネットの短い、ガラスの球体のようなスタイルになる」と語っていました。一体どういう事なのでしょうか?
そもそも、カーデザイナーというのはプロダクトデザイン分野のデザイナーになります。こちらのようなカーデザイナー育成学校などでカーデザインについての専門的な経験を積んだデザイナーです。
そのような方が一体何を言っているのだと思った方もいるかもしれませんが、これはあくまでも理論上の話なのです。
未来の車が電気モーターだとすると、エンジンを載せるボンネットが必要なくなりますよね。駆動システムは、内燃機関や冷却装置の必要がなくなることからコンパクトにまとめられます。
また、自動運転が実用レベルになれば、衝突時を想定したクラッシュゾーンも不要。そしてその分、見通しがいいようにフロントは見通しの良いガラス張りになるはずだ、というのです。
結果、ボンネットの短いガラスの球体が、未来の車の姿だそうです。
つまり、あくまでも理論。カーデザイナーという職業は、前述の通りプロダクトデザイン分野のデザイナーになります。どんなに優れたデザインであっても機能性がなければ無意味な世界なのです。
機能美という言葉があるように、機能性がデザインのよさに直結しているものがプロダクトデザインになります。大きな技術革新のある自動車業界において、カーデザイナーという職業は今後ますます面白くなりそうですね。
では、最新の技術で車はどこまで進んでいるのでしょうか?次世代に向けた自動車の開発は、日本だけでなく世界各国で行われています。漫画やアニメなどで描かれる車の実現は、そう遠くない未来の出来事かもしれません。
中でも、注目を集めているのは自動運転車です。
未来の車と言えば、自動運転を思い浮かべます。自動運転にもレベルがあり、アメリカの運輸省では以下のように定めています。
・レベル0…自動運転なし
・レベル1…運転支援
・レベル2…部分的な運転自動化
・レベル3…条件付きの運転自動化
・レベル4…高度な運転自動化
・レベル5…完全な運転自動化
最終的な目標は、人が操作をせずとも運転ができる車、つまりレベル5の完全な運転自動化です。人間の役割はただ車に乗り込み「○○まで行って」と言うだけ。車内でゲームをしたり動画を観たりして過ごしていれば、勝手に目的地に着くという夢のような空間です。まさに未来の車と言えるでしょう。ただ、残念ながらレベル5までの実現には至っていません。
日本においては、2020年の4月よりレベル3まで公道を走れるようになりました。特定の条件下において、システムがすべての運転操作を制御します。ただし、システム側が実行しきれない場合、すぐに運転に戻らなければいけません。また、自動運転時に事故を起こしたら、ケースによってはドライバー側に責任が生じます。
日本ではレベル3の市販車がようやく販売され始めた程度で、レベル4の解禁もまだされておりません。一方世界に目を向けると、すでにレベル4の段階に進んでいます。
例えば中国の百度(バイドゥ)という企業では、2022年に自動運転レベル4を搭載した市販車を発表し、2023年より納車を開始する予定。どれほど高額なのかと思えば、なんと3万ドル(約400万円)相当とのことです。
レベル4は自動運転で走行できるエリアが限定されているものの、ドライバーの運転負担を軽減できる未来の車だと考えると、安い価格設定だと言えるでしょう。
世界と日本を比較すると、日本は自動運転車を受け入れる体制を整えるのに時間がかかっていると言えます。安全面を検討する必要があるため、仕方のないことかもしれません。実際、海外では自動運転による死亡事故の例があるものの、日本ではないそうです。
技術がいかに発展しようとも、生活する人々を傷つけるリスクを無視して公道で実験を行うことは難しいです。この点を考えると、日本国内で慎重になっていることも分かります。逆に、日本でレベル4以上の自動運転技術を持った車が走れるようになったとしても、安全性が高いと言えるでしょう。
日産のカーデザイナーが語る未来の車は、ボンネットの短いガラスの球体です。ただこれは、機能性がデザインのよさに直結するプロダクトデザイナーとして、理論上考えられた話です。
一方最新の車は、自動運転技術を搭載するようになりました。完全な運転自動化までは至っていないものの、着々と進化し続けています。免許が必要ない未来の車が実現するのは、そう遠くない先の出来事かもしれません。